これら早川が作家の短編の多くは後(1984年ごろ)にシリーズとして一冊「の本にまとめられ発行されている。
まぁ どうでもいい個人的な過去の話で行数稼ぐのはおいて置いて、伊藤計劃 著『虐殺器官』を読んだあと 同じ言語関連である「短編」をむしょうに読み直したくなった…

『マインド・イータ』
早川書房
読み直したくなったのは この連作短編集に収録された「憎悪の谷」。
話は単に
『末期癌の別れた妻の死を見取った男が、家出した二人の息子に会いに行く』
という話で
『逢った親子が何を観て そして何を語りあった』
かである。
親子が再開したその日に交わした「食べ物」に関する会話の中の台詞
「本当に、生き物から食べ物まではただの一歩なんだな」(水見 稜 著『マインド・イータ』 早川書房 収録 「憎悪の谷」 p244)
が妙に印象に残っている事もある。
この短編で親子が最後に交わす会話は涙を誘う。
ただ書き下ろしの「迷宮」に関しては、発刊当初から違和感を感じていた。
これは今回 十数年ぶりの再読で 塩見七生 氏の「ローマー人の物語」を全刊読破することで得たキリスト教に対する考え(「キリスト教」のヨーロッパでの成立と普及の背景を知り事で 単なる宗教であり「種としての人類の根源にかかわる物はない」との確信)でやっと違和感を理解できたのが今回の再読での収穫だったりする。
『虐殺器官』を読まれた方で興味をもたれた方は 「憎悪の谷」と同じく本書に収録された短編「おまえのしるし」とともに読まれる事をお勧めする。